タンスで眠っていた和装のオシャレコートを解きました。
二十歳前の私に母が縫ってくれたものです。
このままの形では、だれも着ることはないでしょうし、役目を果たしたと思えるほど手を通した物なので、解いても惜しくありません。
「まっすぐな背筋は、ミシンを使って縫う」と、母はよく言っていたのに、全部手縫いでした。返し縫いに千鳥がけ、細かく丁寧に縫ってありました。
解くほどに、「自分が親にしてもらったように、タンスに着物をそろえて嫁に出さなくてはならない。」という母の思いいれがうかがえました。
大学を卒業する頃、「後悔することになるのかもしれないけれど、今やりたいことをさせてほしい。」と頼んだとき、父は折れたのに、母は承服しませんでした。
すっかり忘れてしまっていたことが、小さな針目から蘇りました。
赤いけれど、ワンピースにでもりホームしたいと、本からデザインも選んだのに、慣れない裁縫は、なかなか手が進みません。