10年前の3月下旬、愛媛県寒川から瀬戸大橋を渡ってきて、うちの子になりました。
おとなしくて、いたずらに困らされたことはなかったと思っていたのですが、トイレ用に作った砂場で熱心に植木鉢をかじっている写真を見つけました。
うちに来たときには膝にのせたり、抱いて頬ずりしていたのに一ヶ月に3kgずつ体重が増えていきました。
オスの成犬として群れの頭になりたがる頃、家にいる「赤ちゃん」にも決して逆らってはいけないことを教えられ、無茶をして突進してくる「人間の子」にじっと耐え、そっと遠ざかっていくことを学びました。
いつも階段の上から玄関を見下ろし、家の人の動向をとらえていました。
アールは、私にとって歳相応に幸せな10年間を共にしてくれた素晴らしいパートナーで、家族を思う同志でした。
アールの素直なあどけなさが、強くやさしくなることを教えてくれました。穏やかにそっと背中を寄せてくると、あわ立つ胸の思いがすっと吸い取られるようでした。おっとりと大きく白いフワフワの毛は無尽蔵の包容力と慰めの源でした。
3年前に病気になったときも、手当てに応えるように見事に回復してくれました。とても大きな喜びでした。
寿命があることは承知していても、「いつまでも」と願わずにはいられませんでした。
アールは「もういいでしょ」といったのだと思うのです。