風もなく穏やかな朝、近くの公園まで のっそり歩くアールの足取りを見て「もう 帰ろう」と引き返しました。ところが 家まであと一ブロックというところで ぴたりと止まり逆方向に歩きだしました。「こんな調子で遠くまで行けないでしょう。」というのに、頑として進むのです。「この道、工事中で汚いじゃない。」と文句を言いながらも のっそり歩き続けるアールに付き合って、刈田の横、ブロッコリの苗植え、大豆の収穫などの作業を見ながら、誰もいない運動公園まで着いたときには、胸に詰まっていた言葉の塊が解れてきていました。
ため池の水鳥や刈田の野鳥を見ながら、ゆっくり帰ってきました。アールはどうして こんなによく分かってくれられるのでしょう。


今、アールにセーターを編んでいます。毛が深く 寒いのが好きなアールは、きっとセーターなんて着たくないでしょう。ですから、こちらの勝手で着せるセーターです。白くて大きいアールに合わせて模様を考えながら「ねえ、見て!きれいでしょ。アールのセーターよ。」という私をちらりと見上げ、「ウフッ」と息を吐いて また くつろぎます。まるで「また 他愛のないことを言って」というようにも聞こえるのですが、自分のものが編まれているのに満足しているようにも見えます。
家の近くの横断歩道には黄色い旗を持ったお母さんが二人立ちます。帰りが少し遅くなって、横断歩道の向こうの集合場所には子供たちが集まりはじめていたので、すこし先で道路を渡ろうとしたのですが、「いつもここで渡るでしょ」とアール。子供の集団の中に入りたくなかったので、リードを引いたら座り込んで抵抗して、引っ張っても押しても動きません。子供たちとお母さんに笑われて、飼い主の威厳もなく「すみません」と横断歩道を渡らせてもらいました。アールも私の足元にぴったり寄り添って「だって おうちに帰るのはこの道なのだもの」と言いたげに、下を向いて足早についてきました。