タンスで眠っていた和装のオシャレコートを解きました。
二十歳前の私に母が縫ってくれたものです。
このままの形では、だれも着ることはないでしょうし、役目を果たしたと思えるほど手を通した物なので、解いても惜しくありません。
「まっすぐな背筋は、ミシンを使って縫う」と、母はよく言っていたのに、全部手縫いでした。返し縫いに千鳥がけ、細かく丁寧に縫ってありました。
解くほどに、「自分が親にしてもらったように、タンスに着物をそろえて嫁に出さなくてはならない。」という母の思いいれがうかがえました。
大学を卒業する頃、「後悔することになるのかもしれないけれど、今やりたいことをさせてほしい。」と頼んだとき、父は折れたのに、母は承服しませんでした。
すっかり忘れてしまっていたことが、小さな針目から蘇りました。
赤いけれど、ワンピースにでもりホームしたいと、本からデザインも選んだのに、慣れない裁縫は、なかなか手が進みません。
オオジシバリ
日差しが強くなって目立つようになったブタナ(タンポポモドキ)の仲間かと思ったのですが、ひとまわり小さく、花の形も違います。見るからにたくましいブタナよりは可憐に感じます。
似ている花は多いのですが、どうやらオオジシバリのようです。ジシバリは、「細長い茎が地面をはって伸び、その途中から根を出して増える様子が、地面をしばるように見える、というのが名の由来」だそうです。
オオジシバリは、「全体にジシバリよりすこし大きめで、高さ20cmほど。やや湿った場所や田の近くなどで普通に見られます。葉はへらのような細長い形です。」と説明されています。
ジシバリもオオジシバリも帰化植物図鑑には載っていませんでした。昔からの日本の野草なのですね。
目につく花のほとんどが帰化植物なので、この花の名前を知りたくて帰化植物図鑑の写真と見比べました。キク科の帰化植物だけで90ページもありました。キクやタンポポに似た花の名まえを調べるのは、もうやめたくなりました。
アメリカフウロ
まだ刈り込まれていない土手で、ハイアオイの傍に広く生えていました。
急に暑く感じられる日差しの中で、ぽつぽつと目立たない花をつけていました。
オランダフウロのピンクの花は、草の陰でも目を引くのに比べると、同じフウロソウ科の帰化植物でも、こちらは観賞用にはなりそうもありません。
フウロソウ(風露草)とは、「むかしから下痢などの薬として使われ、飲めばすぐ効くということから、『現の証拠』と名づけられた」というゲンノショウコのことのようです。
北アメリカ原産のアメリカフウロ、ヨーロッパ原産のオランダフウロ、、地中海沿岸原産のジャコウオランダフウロ(観賞用に栽培もされている)、薬用に利用されているのは、むかしから日本で使われているゲンノショウコだけなのでしょうか。
アメリカフウロは、「太平洋諸島やアジアに帰化している。・・・昭和になってから日本に帰化し、現在では、東北地方以南に広く発生するようになった。」と解説されています。土手の上のかなり広い範囲に生えていたので、丈夫な草なのでしょう。
ハイアオイ
冬の間は丈は高くはないのですが、青々とした元気な葉が冬枯れの野に目立ちました。
日差しが強くなるとともに、ぐっと伸びてきて、小さい花をつけています。
葵の仲間なのは分かるのですが、花が小さく観賞用にはならない葵だけで、ウサギアオイ、フユアオイ、ハイアオイ、と手もとの本には3種もあります。
フユアオイは、「江戸時代に野菜として導入され、・・・葉にしわのよったものをオカノリと呼んで食用に栽培することがある」と説明されています。この葉は、美味しく食べらるようには見えないので、フユアオイではなさそうです。
葉の形や花のつき方は、ウサギアオイとよく似ていますが、「全体に粗い毛がまばらにある」ので、ハイアオイと判断しました。「花弁はガク片とほぼ同長」という特徴もあてはまります。
ハイアオイは「ヨーロッパ原産で南北アメリカやオーストラリアに帰化している越年生または多年生草本。」と解説されています。「本州中部以南の沿海地に帰化している。」ようです。
ウキツリボク
つる性なので、あんどん仕立ての鉢植えにされています。露地植えにしたらよく育ち、根は一本なのですが、フェンスに絡まったつるは5~6mあり、お隣との間の生垣のようになりました。
手に負えないよど枝が伸びてしまったのを、去年思いきって刈り込んでもらったら、今年はよく花が咲いています。
アブロチンという名の花の種類のようですが、これも憶えにくい名前です。ウキツリボクなら、釣りで使うウキを連想させるので、分かりやすい呼びかたです。
イベリス
今、家で一番目立っている花です。10年以上前から、毎年咲いてくれています。
名前を憶えられなくて、通り過ぎる人に尋ねられても、ゴメンナサイでした。
花の図鑑を探すと、「花がむくむくと盛り上がった砂糖菓子のようなので、英名をキャンディタフト」と説明されていました。意味の分からないカタカナ名まえは苦手ですが、これなら憶えられそうです。

説明はさらに「4花弁のうち、内側の2弁が小さく、外側の2弁が大きくてアンバランスな花形から、和名をマガリバナといいます。」と続いています。これなら分かりやすくて、大丈夫です。
「いつまでも寒い」と思っていたのですが、もう5月、一面にタネツケバナが咲いていた畑には、麦が育ち、青々とした穂がツンと伸びていました。
いつの間に伸びたのか、イネ科の草は腰の丈ほどもあり、穂をたれています。水田にも水が入りはじめました。
この時期の散歩は「要注意」でした。黄色く枯れていれば、もう大丈夫ですが、青々とした草には、除草剤がかかっているかもしれないので、道端の草には近づかないようにしなくてはなりませんでした。
草刈機の音はうるさいけれど、刈り込まれた草の匂いには安心しました。
暖かくなる頃に小さな花を開く、春の野草とも、そろそろお別れです。
イヌコモチナデシコ
いつも行くスーパーの前の歩道と車道の境の植え込みに咲いています。他の場所ではあまり見かけないのですが、年々、少しずつ増えてきているような気がします。
ずっと名まえが分からなかったのですが、新しく手に入れた図鑑に載っていました。
イヌー犬、コモチー子持ち、ナデシコー撫子、長い名まえですが、分解すると憶えられそうです。ヨーロッパ原産で、関東以西で見られる帰化植物のようです。
ひなげし
虞美人草ともよばれるので、中国原産かと思っていたら、ヒナゲシの原産地はヨーロッパで、世界中に帰化しているようです。「日本には、江戸時代以降に観賞用に渡来し、それから野生化しているので、花の色や大きさには変化が多い。」と説明されています。
この辺りでよく見かけるのは、ナガミヒナゲシという種類のようです。果実がヒナゲシより細長いから、ナガミヒナゲシなのだそうです。
こちらは、地中海原産で、アメリカやアジアに帰化しているそうです。「近年では、各地で道端や市街地に帰化している」と解説されていますが、「1961年に東京で見出され」とあるので、ヒナゲシよりもずっと後から渡来したもののようです。
キンセンカ
朱色がかった花は、遠くからも目を引きます。
敷地の一角に咲いているだけでなく、野川のほとりや道端にも群生しています。
「ギリシャ・ローマ時代から栽培され、中世のヨーロッパでは葉を野菜に、花びらを料理の色づけや薬用に利用したそうです。」と説明されています。観賞用に品種改良されていて、さまざまな名まえ(カレンデュラ)でよばれているようです。
オランダフウロ
一月ほど前、道端のアスファルトの割れ目に咲いているのを見つけた花です。
その後も、畑の畔に咲いているのを見つけましたが、名まえが分かりませんでした。
道ばたの花を見ながら歩いていると、「名前がわからない花」が増えていきます。とうとう、もう一冊本を買いました。まだ、よく読んでいないのですが、パラパラと写真を見ていたら、あの、「道端の花」を見つけました。
オランダフウロでした。
観賞用に栽培もされている花のようです。ヨーロッパから西アジアにかけての原産で、江戸末期に観賞用として輸入されたそうです。その後「帰化状態になり、現在では北海道から九州まで道端や畑の周辺に散発的に生じる。」と解説されています。

